こわれもの CHRONICLES #243 [ボブ・ディラン『クロニクルズ』]

改行して、今度は"Everything Is Broken"の話になります。
→bobdylan.com: Everything is Broken
壊れた物のことをいろいろ歌っています。
歌詞の言葉は、その音の中に意味が込められているという言い方をしています。
意味はあまり重要ではないとも読めるのですが、もちろん意味を無視することはできません。
ディランは本当に壊れた物のことを歌いたかったのです。
だから、コニーアイランドの砂浜で寝転んでいたら、砂の中にラジオを見つけたというような回想をしています。
もちろん、ここで私が思い出すのは「錆びたナイフ」です。
なぜか石川啄木も思い出します。
♪ 砂山の砂を
♪ 指で掘ってたら
♪ 真っ赤に錆びた
♪ ジャックナイフが 出て来たよ
ディランは今まで生きてきて、壊れた物をいろいろと見てきました。
一番大切な物が壊れてしまうことだってあります。
どれも直すのは難しいことです。
この歌にも、採用しなかった歌詞がありました。
♪ Broken strands of prairie grass.
♪ Broken magnifying glass.
♪ I visited the broken orphanage and rode upon the broken bridge.
♪ I'm crossin' the river goin' to Hoboken.
♪ Maybe over there, things ain't broken.
♪ 壊れた大草原の地。
♪ 壊れた拡大鏡。
♪ 壊れた孤児院を訪れて、壊れた橋を渡った。
♪ 川を渡ってホーボーケンに行くところ。
♪ もしかしたら向こうでは、物が壊れていないかもしれない。
ホーボーケンとは、ニューヨークのマンハッタン島からハドソン川を渡った対岸にある町です。
東京で言えば、多摩川を渡ったあたりという、近場の話です。
この部分はディランがほんの少し楽観主義を盛り込もうとした箇所なんですが、結局それは削ってしまいました。
確かに、すべてが壊れているといった歌詞の方がおもしろいでしょう。
私は下請けで雑誌の編集や記者をやっていた頃、何人かのカメラマンと一緒に仕事をしました。
昔学校や病院として使われていた建物、つまり廃墟の写真を撮るのが好きだというカメラマンがいました。
似たような写真集が話題になって売れていたころなので、彼の写真は仕事にならなかったでしょうが、でも廃墟に惹かれるというのはよくわかりました。
結局写真週刊誌の仕事で食っているようでしたが、彼は金にならない廃墟の写真を撮っているからこそ、「写真家」だったのだと思います。
ゴミの写真を撮っていたカメラマンは、ちゃんとその写真集がそこそこ売れて名が売れていたのですが、この人は何にでも興味を持って、「フォトジェニックですね~」と喜ぶような人でした。
プロだなあと感心しました。
♪ それはこわれもの
そう、中山ラビさんにそんな歌があったように勘違いしていました。
大切なものは、とても壊れやすいんですよね。

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